「一級建築士をもっていると公務員採用試験に有利なのかな?」
「公務員で一級建築士をもっていると手当や年収などで優遇されるのかな?」
公務員へ転職を考えている一級建築士の方は疑問に思っていることでしょう。
この記事を読むと以下のことがわかります。
- 一級建築士の資格は公務員採用試験で有利なのか
- 公務員として働くうえで一級建築士は必要なのか
- 公務員が一級建築士をもっておくメリット
この記事を書いた人
- 大学卒業後、都市計画コンサルタントへ就職
- 2年後、地方公務員(県庁)建築職へ転職
- 公務員になってから一級建築士を取得(学科6回目くらいで取得)
- 26年間勤めた公務員を早期退職し、現在フリーランスとして活動中
一級建築士でも公務員採用試験で有利になることはない
一級建築士の資格をもっていてデメリットになることはもちろんありませんが、圧倒的なメリットも少ないのが現状です。
意外かもしれませんが、以下で詳しく解説していきます。
一級建築士をもっているだけでは採用試験で有利にならない理由
採用試験で一級建築士をもっていると有利に思いますが、公務員の場合、資格があるだけでは有利になりません。
公務員では、建築の高度な技術的知識を求められる場面が少なく、それ以上に人柄やコミュニケーション能力、チームワーク、プレゼンテーション能力などが求められるからです。
実際、次のような人がいた場合、採用したくなるのはどちらでしょうか?
Aさん:一級建築士の資格はあるけど、コミュニケーションが取りずらい。自分さえ良ければいいタイプ。説明もわかりにくい。
Bさん:一級建築士の資格はないけど、最低限の建築知識はある。コミュニケーションは良好で協力的。説明も簡潔でわかりやすい。
公務員では後者のBさんが求められます。
一級建築士の資格なんてほんの一部分に過ぎず、採用試験では総合的に判断されるので圧倒的に有利になることはありません。
建築職の専門試験は二級建築士レベル
とはいえ、一級建築士をもっていても仕方ないというわけではありません。
建築職の専門試験は二級建築士レベルです。一級建築士なら、二級建築士が求められる知識はもっているはずなので、専門試験で良い点数を取れる可能性が高くなります。
「一級建築士の資格があるから合格に近い」ということではなく、「一級建築士だから専門試験で良い点数が取れて合格に近づきやすい」ということになります。
実際合格しているのは、一級建築士が半数
僕がいた県庁では、毎年社会人枠で5、6名程度の建築職が採用されています。
そのうち一級建築士を持っているのは約半数です。年度によって少しバラつきがあります。
この結果からも、一級建築士が公務員採用試験に有利であるとは言えません。
公務員として働くうえで一級建築士は必要なのか
では、建築職公務員として働くうえで一級建築士は必要なのか気になりますよね。
結論は、一級建築士の資格がなくても問題ありません。
理由は、一級建築士しかできない仕事は99%ないからです。
たまにあるのが、福祉や教育委員会の補助金関係の仕事で、一級建築士が内容をチェックしなければならないというものです。
どれだけの人が関わっているかというと、数百人いる建築職のうち1人程度です。
参考までにお話しますと
公共建築物を建築する際、建築確認申請(正式には「計画通知」と言います)を出します。申請者は知事や教育長になりますが、設計者は委託先の設計事務所になるので、公務員に有資格者はいりません。
公務員が一級建築士をもっておくメリット
では、「公務員が一級建築士をもっていてもメリットはないのか?」というと、もちろんメリットはあります。
資格をもっていることで、信頼されることが一番のメリットです。
主に以下の場面でメリットを感じることが多いです。
- クレーマー対応
- 設計事務所やゼネコンとの打合せ
- 住民、市町村、県庁内の他部署とのやりとり
クレーマー対応
僕が一級建築士をもっていて一番効果があったのはクレーマー対応の時でした。
気に入らないことがあってほぼ毎日、定刻に電話がかかってきて、その度に1時間は対応しないといけないクレーム。
聞かれたことに対して丁寧に回答しているものの、同じ話がグルグルと回り出すいつものパターンへ。
ある時、クレーマーから「適当な話してたらあかんで。兄ちゃんは資格持っているのか?」と言われたので、「はい、一級建築士です」と答えたら、相手は一瞬無言。「・・・そうか。じゃ切るわ」と電話がきれ、その後クレームの電話はかかってこなくなりました。「すげえ!一級建築士!」と思った瞬間でした。
設計事務所やゼネコンとの打合せ
設計事務所やゼネコンの人は、一級建築士や一級建築施工管理技士などの資格をもっていて知識も経験も豊富な方が多いです。
公務員なので「あまり知らないだろう」と下に見てくる人もいるので、「一級建築士をもっている」と伝えると態度が変わる時があります。
なめられなくなります。
住民、市町村、県庁内の他部署とのやりとり
一級建築士をもっていても、名刺に書いたり「僕は一級建築士です」と名乗ったりすることもないので、一級建築士をもっているかどうかは通常わかりません。
でも、住民や市町村の職員、県庁内の建築以外の部署の人と話している時に、ふとした会話の中で「一級建築士もっているのですか?」と聞かれる時があります。
「はい、もっています」と答えると、90%以上の確率で「へー、すごいですね!」という雰囲気になります。少しだけ優越感に浸れるのは悪くありません。
業務とは関係ありませんが、個別に自宅の相談とかされたケースもありました。
一級建築士をもっている公務員の現状
一級建築士をもっていると公務員の世界ではどのように扱われるのでしょうか?給与面、人事面のことを解説します。
一級建築士の資格をもっていても手当はつかない
一級建築士をもっていても資格手当はありません。
理由は、資格がなくてもできる仕事だからです。
たまたま一級建築士しかできない仕事をしていたとしても資格手当はありません。
建築職公務員の仕事内容はこちらの記事でまとめていますので、参考にしてみてください
昇進にもほぼ関係ない
僕のいた県庁では「一級建築士をもっていると昇進に有利」と言われた時期がありましたが、実際は関係ありませんでした。
一級建築士をもっていなくても仕事ができる人は昇進していますし、その逆も然りです。
特に最近は、職員の数が足りていないので、資格の有無に関係なく昇進させざるを得ない状況もあるようです。
ただ、自治体によっては一級建築士をもっていれば昇進しやすいところがあるかもしれませんが、こればかりはホームーページなどで確認しにくいですね。
まとめ
今回の記事では
- 一級建築士は公務員採用試験で直接有利になることはありませんが、二級建築士レベルの専門試験で高得点を取れる知識をもっている
- 一級建築士の資格がなくても公務員の仕事はできるため、資格手当は出ません。昇進にも影響しない自治体もある。
- しかし、一級建築士の資格があるとクレーム対応などで思わぬ効果がありメリットも多い。
というお話をしました。
公務員に転職を考えている一級建築士の方へ
採用試験で圧倒的に有利になることはないので、公務員試験対策をしっかりやりましょう。
難関の一級建築士試験に合格した方なら、公務員試験も突破できるはずです。
がんばってください!!