財政課に配属されて喜んでいる人もいるでしょう。
「やったー!能力が認められた!」
「出世コースを歩み始めた!」
逆に、落ち込んでいる人もいるでしょう。
「なぜ、俺が財政課やねん!」
「私、なにか悪いことした?」
僕は財政課に配属された経験がありますが、喜びゼロ、落ち込みMAXでした。
「なんで俺が財政課やねん!」「他に適任者おったやろ!」「誰が俺を財政課に推したのか?」とネガティブな言葉しか出てきませんでした。
財政課は特殊です。下手をすると心身ともに疲弊して病んでしまう危険性がとても高い職場です。
この記事は、財政課に配属されて落ち込んでいる人に向けて、どうやって無事に財政課から抜け出すかついて率直に語っています。
先に伝えたいメッセージを書いておきますと、以下の3つです。
- 頑張りすぎないで!
- 1年で異動したっていい!
- 自分の一番大切にしたいことを優先して!
僕が経験した財政課の雰囲気や乗り切るためにやったことなども紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事を書いた人
- 大学卒業後、都市計画コンサルタントへ就職
- 2年後、地方公務員(県庁・建築職)に転職
- 40代半ばで財政課に配属され、心身ともにギリギリの状態を経験
- 26年間公務員として勤務し51歳で早期退職
- 現在は、建築関係の会社へ転職
財政課への異動

僕がいた県庁では、財政課に建築職の席が1つだけありました。
建築職の僕は「百数十人いる建築職のうち、運の悪い1人が財政課に行くんだなあ」と軽く考えていたら、まさか自分が行く羽目になったんです。
これまで事業課で予算要求した経験はありましたが、「財政のことを分かってない」「予算査定はもちろん知らない」「40代半ばの職員が財政課でやっていけるか」不安しかありませんでした。
財政課に行くのはイヤでイヤで仕方ありませんでした。
異動前日の3月31日までは元気だったのですが、異動日の4月1日になぜか熱を出すという事態。
体がSOSを出すって本当にあるんだと実感した日でもありました。
財政課の仕事

財政課の仕事は予算査定だけではありません。
- 地方交付税
- 地方債の総務省申請・起債・償還・管理
- 基金の積み立て、取り崩し
- 予算書の作成
- 決算
- 今後の予算見通し
- 執行協議
など、予算査定以外にもお金に関するたくさんの業務があります。
【予算書とは】
簡単に言いますと、歳入歳出予算、繰越明許費、地方債など予算の内容を取りまとめたものです。
議会へ提出する予算案ですので、間違いは絶対に許されません。
事業課では目にすることがほとんどないので、知らない職員もたくさんいると思います。予算要求書や予算査定書とはまったく別のものです。
【執行協議とは】
実際に事業を始める際に財政課と協議して了承を得ることです。
予算査定で詰め切れなかった詳細の部分を、事業を始める前に財政課と協議しなければいけません。
僕は、事業課で新しい補助事業をスタートさせるときに、補助制度の内容について執行協議した経験があります。
僕が経験した財政課の特徴

財政課は事業課と違って独特の雰囲気があります。僕にとってはマイナスの印象が多かったですね。
- 部屋が静かすぎる
- 出張が少ない
- 出世する人の登竜門
- 偉そうな人が多い
部屋が静かすぎる
僕が財政課にいたときは、私語をしている人はまったくいませんでした。
住民が訪問してきたり、頻繁に問合せの電話が鳴ることもなく、来室するのは部局の予算担当者だけです。
財政課は部局から嫌われていることが多いので、気軽に立ち寄って世間話をしていく人が少ないのも要因です。
電話している声が部屋中に聞こえるので、部局とトラブルになっていることなどは皆に知れ渡ります。
日ごろの何気ない会話は、実はストレスを和らげコミュニケーションを円滑にする大切な役割があるんだとこの時初めて感じました。
出張が少ない
財政課は外部の人と接触することは少なく、部局とのやりとりが中心なので、出張に出ることはほとんどありません。
僕の場合、1年に3回だけでした。それ以外は執務室で仕事です。
ひと言で言うと、「缶詰め状態」です。
元々僕がいた建築の部署では、建物所有者や工事現場、自治会などに出かける機会が多かったので、外の空気を吸ってリフレッシュできましたが、財政課ではそれができません。
事業課の経験が長い僕にとっては、とても違和感がありましたね。
出世する人の登竜門
事務職の人にとって、財政課に配属されたことは「出世コースを歩めるかどうか」に関わってきます。出世する人の登竜門と言える部署です。
そのため、みんな露骨に「失敗したくない」オーラを出しているんです。
事業課では、自分の担当外のことでも知っていることがあればアドバイスしたり、逆にアドバイスされたりしながら進めます。
財政課では自分に与えられた役割を確実に進め、それ以外のことは知らん顔をする人が結構います。
エリートの仕事の進め方なのかどうかわかりませんが、「巻き添えを食らって失敗したくない」というのが露骨に伝わってきます。
偉そうな人が多い
「財政課が上で、部局が下」と勘違いし偉そうに振る舞っている人が一定数います。
特に、財政課の経験年数が長い人にその傾向が強く見られます。
「事業課は予算を要求する立場、財政課は査定する立場」ということだけなのですが、「事業課はお願いする側、財政課はお願いを聞いてあげる側」と勘違いするんですね。
財政課では異動のスパンが長く10年近く在籍している人も少なくありません。
そのような10年戦士が部局に対して暴言を吐く場面を何度も目にしています。
「これがエリートなのか」と正直、ドン引きしましたね。
「財政課は激務」は本当!

財政課ははっきり言って激務です。みなさんご存知ですよね。
予算シーズンは10月から2月くらいまでで、この5ヶ月間で残業は少なくても400時間になります。やっている人は700時間以上の人もいました。
「紅葉狩りはギリギリ楽しめるが、スキー・スノボはできない」「朝日は見れるが、夕日は見れない」という生活です。
激務となる要因としては、以下のことがあります
- 締め切りがタイト
- 必ず電卓をたたく
- お金のことなので失敗が許されない
締め切りがタイト
予算査定は、2月議会に間に合うように逆算でスケジュールが決まります。
次年度の当初予算の査定をしながら、当該年度の補正予算の査定もします。
当初予算・補正予算のそれぞれに、補佐計数、課長計数、部長計数などの査定ステージがあり、そのステージに合わせて部局との調整を進めていくのです。
膨大な予算要求資料の一つ一つに目を通し、事業内容・効果・予算額・必要性などをチェックし、部局と議論を重ね、各ステージに合わせた予算査定案を作ります。
さらに、予算要求とは関係ない通常業務(僕の場合、総務省への起債申請など)も並行してやるので、毎日が何かの締切日になったような感じです。
必ず電卓をたたく
お金を扱うのでエクセルでの計算が必須ですが、最後は電卓で確認することが求められます。
起案を回したときも、「電卓たたいた?」と必ず聞かれます。
千円単位や百万円単位で資料を作ることも多く、エクセルで小数点以下の端数がうまく処理できていないと、合計額の一の位がズレることがあります。それを電卓(手計算)で確認するのです。
「コンピューターで計算したことを人がチェックするって逆じゃない?」
「エクセルで正確に関数を入れたら電卓いらないよ」とずっと思いながらやっていました。
残念ながら「早打ち用の電卓」と「電卓のブラインドタッチ」は必須です。
お金のことなので失敗が許されない
数兆円規模の予算や決算、数億円規模の事業費に対して、円単位で整合させないといけません。
議会へ提出したり、総務省へ申請したりする資料に間違いがあると、信用問題に関わるので、失敗は絶対に許されません。
当たり前のことですが、一番気をつかうことでした。
財政課でつらかったこと

建築職の僕が財政課を経験してつらかったことは、以下のことです。
- 残業が多い
- 事務職でも経験したことがないことを建築職がやらされる
- 決裁に時間がかかる
残業が多い
残業が多いのは、やはりつらかったですね。
僕の場合、1年目が410時間、2年目が460時間ほどです。これでも少ないほうですが、40代半ばの人間にとって、予算シーズンの5か月間でこの残業時間は大変なものでした。
予算シーズンは終電かタクシー帰りのどちらかになります。
タクシーの運転手さんに顔を覚えられることも珍しくなく、乗車した途端に「この前はどうも!今日も残業ですか?」という会話を何回もしました。
ちなみに、毎週ではありませんが、土日出勤もあります。仕事が溜まっているので出勤せざるを得ないんですね。
予算シーズン以外にも、決算シーズンの5月は忙しく、慣れない人にとっては年中忙しいという状況です。
事務職でも経験したことがないことを建築職がやらされる
会計には、一般会計・特別会計・企業会計があります。
僕自身、「企業会計って何?」「特別会計と企業会計って何が違うの?」という状態だったのですが、特別会計から企業会計へ移行する会計があって、その調整を僕がやらされました。
この会計の移行は県庁でも前例がなかったものです。
「収益的収支」「資本的収支」何それ???建築職がやることか?
予算書の作り方も一般会計や特別会計とは全く異なります。
事務職でも経験したことない業務を建築職の僕が任されることとなり、不信感でいっぱいでした。
ある程度サポートしてくれるのかと思っていたら甘かったですね。
巻き添えを食らいたくない事務職は見て見ぬふり。
「これが県庁のエリート集団か?」とドン引きでした。
今考えると、この不信感が転職を考えるきっかけだったように思います。
決裁に時間がかかる
決裁が一筋縄ではいきません。
「条文などのすべての根拠資料」と「前年度の同じ内容の起案文書」の添付が必須です。
根拠資料をすべて揃え、前年度の起案文書を探し、必要なコピーをとってマーカーする。
大事なことですが、なかなかの手間です。
起案自体は間違っていなくても、添付資料が不足しているだけで決裁が進まないことがよくありました。
事業課ではそこまで厳密にやらないのですが、財政課では許されないんですね。
「これまでいた建築の部署がユルいだけなのか」と思いましたが、事務職の人でも「財政課は厳しすぎ」と言っていたので、財政課が特別なのだと思います。
財政課を乗り切るためにやったこと

財政課に配属されたことはどうしようもないので、「どうやって乗り切ったか」をご紹介します。周りの人は変えられないので、自分の考え方・やり方を変えた感じです。
- ブラック企業に勤めたと思いこむ
- モチベーションを保てる何かをもつ
- 流されたほうがラク
ブラック企業に勤めたと思いこむ
「ブラック企業に就職してしまった」と思い込むようにしていました。
長時間の残業、偉そうな人間、見て見ぬふりの職場・・・。
「とりあえず2年間はがまんしよう」と。
こう思うことで何かが劇的に変わることはありませんが、自分をなだめようとしていたのだと思います。
モチベーションを保てる何かをもつ
日常交わされる言葉は「歳入歳出、減債基金、財政調整基金、償還、借換債・・・」など。
建築職の僕には全く興味のない言葉です。
とはいえ、何とか財政課でやっていかないといけないので、建築との接点を保てるように『日経アーキテクチャー』という建築雑誌を定期購読しました。
建築の部署にいればおそらくやっていないことですが、無性に建築と関わりたくなったのです。
モチベーションを保てる何かを持っておきたいという気持ちだったのかもしれません。
心の拠り所というかモチベーションを保てる何かをもっておくと、財政課のことを考えなくていい時間が作れます。「もうちょっと財政課で頑張ってみるか!」と気分転換もできます。
趣味でも何でもいいので、心が落ち着く何かをもつようにしましょう!
流されたほうがラク
財政課では、これまでのやり方や考え方、上司の意見が優先され、個人の意見が通らないことが多々あります。「建築職が何言ってるの?」っていう雰囲気もありました。
ですので、言われたことを言われたとおりにやることを徹底しました。自分の考えを加えないということです。完全に「操り人形」になりました。
本来なら、自分の考えを言わないほうがつらいのですが、財政課では流されたほうがラクでした。
まとめ|財政課へ配属されて落ち込んでいる人へ伝えたいこと
財政課に配属された経験を踏まえて、落ち込んでいる人に伝えたいことは以下のとおりです。
- 頑張りすぎないで!
- 1年で異動したっていい!
- 自分の一番大切にしたいことを優先して!
頑張りすぎないで!
自分の心とからだが一番大切です。病みそうになったら病む前に休みましょう。
代わりに誰かがやってくれます。
誰かに迷惑がかかるなんて思わないでください!
財政課に配属されたことで十分迷惑を被っているのですから!4
1年で異動したっていい!
財政課を1年で出されると「仕事ができない」とレッテルを貼られたような感じになるかもしれません。
でも、実際、そんなことはありません。見ている人はちゃんと見てくれています!
財政課に向いていないだけです。
財政課に向いている人は別の意味で「変な人」
気にすることはありません!
自分の一番大切にしたいことを優先して!
出世、家族、恋人・・・
一番大切なことは人それぞれです。
優先順位を間違えると、後悔してもしきれない事態に陥ってしまいます。
絶対に優先順位を間違えないように!
出世したい人
財政課でガツガツ頑張ってください。
家族を大切にしたい人
仕事の優先順位は2番目以降です。財政課を優先すると家庭が崩壊することもあり得ます!
周りのペースに合わせて自分のペースを変える必要はありません。「人は人、自分は自分」です!
恋人を大切にしたい人
「財政課で忙しかったから恋人と別れた」という話はよく聞きます。笑い話では済みません。
仕事の優先順位は2番目以降です。自分の人生が左右されてしまっては、後悔しても後悔しきれませんよね。