最近ニュースなどで「空き家問題」が取り上げられることが多くなり、関心をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
空き家を放置していると、倒壊やごみの不法投棄、犯罪の温床などさまざまな悪影響が生じるだけでなく、資産価値の低下や維持管理の費用、税金など経済的な打撃を受けているかもしれません。
すでに空き家を所有している人だけではなく、将来相続などで空き家を所有するかもしれない人に、空き家を放置する問題点や解決策を知っていただきたいと思います。
空き家の現状
総務省の住宅・土地統計調査によると、2018年時点の空き家の総数は849万戸で、1998年の576万戸から約1.5倍に増加しています。 そのうち、空き家問題の中心となる「その他の空き家」(グラフの下に説明があります)が1.92倍の増加となっています。
出典:空き家政策の現状と課題及び検討の方向性(国土交通省住宅局 令和4年10月)
ひと口に空き家と言っても、以下の4種類があります。
- 賃貸用住宅
- 売却用住宅
- 二次的住宅
- その他の空き家
これらのうち「その他の空き家」というのが、何らかの理由で長期不在になっていたり、建替えなどのために取り壊したりする住宅のことで、空き家問題のメインとなる空き家です。
ちなみに、二次的住宅とは別荘など普段は人が住んでいない住宅のことです。
賃貸や売却、別荘など有効活用するための住宅(空き家)は問題ないのですが、単に住んでいない、今後どうなるかわからず放置されている空き家が問題になります。
A.2024年2月時点では、2018年が最新のデータとなります。
住宅・土地統計調査は5年ごとに行われるもので、直近では令和5年(2023年)に実施されました。
調査結果は翌年度(今回の調査の場合、令和6年度)に公表されるため、2024年2月時点では最新の調査結果は前回調査の2018年となります。
空き家が抱える問題点
単に住んでいない、今後どうなるかわからず放置されている空き家が増えると、以下のような問題が生じるおそれが高まります。
- 近隣や通行人に被害がおよぶ
- 住宅の資産価値が下がる
- 維持管理のために時間もお金もかかる
- 固定資産税を払い続けなければならない
- 特定空家や管理不全空家に指定される可能性がある
- 不法投棄や犯罪の温床となる可能性がある
近隣や通行人に被害がおよぶ
屋根や外壁が朽ち落ちて、隣の建物や敷地に落ちたり、通行人に当たってケガをさせたりすることもあり得ます。
特に地震や台風などは要注意です。
普段は老朽化していないように見える屋根でさえ、瓦が飛んだりめくれあがったりすることがあるので、メンテナンスの行き届いていない空き家ならその可能性は高まるでしょう。
住宅の資産価値が下がる
一般的に、住宅は新築のときから資産価値は下がり続けます。
放置されている空き家は維持管理がされていないケースが多いので、さらにマイナス要素となってしまいます。
資産価値が下がった住宅は高値で売却できないだけでなく、売却するために修繕費用が必要になる場合もあります。
維持管理のために時間もお金もかかる
人が住まなくなると住宅の劣化は急激に進む傾向があります。
風が通らないので空気がよどみ、湿気やほこりがたまってカビの発生や木材の腐食などで建物の劣化が進みます。
シロアリ・ハチなどの害虫やネズミ・野良猫などの害獣の被害を受ける可能性もあるでしょう。
定期的に換気や清掃をすることが望ましいのですが、自宅から遠ければ通うのに時間もかかります。
劣化した箇所は修繕が必要になるときもあり、修繕費用もバカになりません。
固定資産税を払い続けなければならない
不動産の所有者は固定資産税を支払わなければいけません。
空き家の資産価値が低ければ、大きな負担とはなりませんが、それでも無駄な出費が続くことになります。
マイホームを持っている人の場合、自宅と空き家の両方の固定資産税を支払わないといけません。
特定空家や管理不全空家に指定される可能性がある
2023年12月に空家対策特別措置法が改正され、周囲に著しい悪影響を与える空き家(特定空家)や放置すれば特定空家となるおそれのある空き家(管理不全空家)に対して、市町村が指導・勧告できるようになりました。 勧告された空き家は固定資産税の住宅用地特例(1/6等に減額)が受けられなくなります。
出典:国土交通省
不法投棄や犯罪の温床となる可能性がある
人が住んでいない住宅とわかれば、不法投棄や犯罪の温床となる可能性があります。
不審者が不法に滞在したり、内部を荒らしたりすることもあれば、犯罪拠点として利用されるなど大きなトラブルに巻き込まれることもあるでしょう。
また、生活ごみだけでなく粗大ごみを不法投棄される危険性も高まります。
放置された空き家では不法投棄に気づくことができずに、どんどんエスカレートしてしまうことも珍しくありません。
空き家問題の解決策
空き家を放置しないための解決策には以下のものがあります。
- 空き家を売却する
- 空き家を賃貸経営する
- 空き家バンクの活用
空き家を売却する
立地条件が悪い場合や老朽化が進んでいる場合は、賃貸経営が難しいため売却するのが望ましいケースが多いでしょう。
売却方法には大きく2種類あります。住宅を解体せずに「古屋付き土地」として売却する方法と、住宅を取り壊して更地にし「土地」として売却する方法です。
古屋付き土地の場合は、解体費用がかからず固定資産税の住宅用地特例(1/6等に減額)を受けたまま売却活動ができるメリットがあります。
更地にして土地として売却する方法は、建物の老朽化が進んでいてリフォームなどに多額の費用がかかる場合におすすめです。
自分で解体する必要がありますが、解体費用は土地価格に上乗せできる場合もあるので、そこまで心配しなくていいでしょう。
空き家を賃貸経営する
賃貸経営の最も大きなメリットは、思い入れのある家を手放さずに活用できる点です。
また、日常の管理を管理会社に委託すれば、手間をかけずに維持管理ができるメリットもあります。
立地や築年数、間取りなど賃貸経営に適している物件であれば、長期にわたる収入が期待できるでしょう。
一方で、貸主としての責任が発生しますし、不動産投資としてのリスクがあることも十分に理解しておく必要があります。
空き家バンクの活用
空き家バンクとは、空き家を「売却・賃貸したい人」と「活用したい人」をマッチングさせるサービスのことです。
空き家を売却・賃貸したい人が登録し、活用したい人が物件を見つけて購入・賃貸する仕組みです。
自治体が主体となって運営しているので信頼性は高いですが、自治体は契約や仲介に関与できないので、自分で直接交渉する必要があります。
不動産会社の情報に掲載されにくい古民家なども掲載できる場合が多いので、空き家バンクの活用も検討してみてはいかがでしょうか。
放置するのは一番の損!とにかく早く動きましょう
空き家を所有することになった場合、放置するのは一番の損です。
売却するにしても賃貸経営するにしても、とにかく早く決断し動くことが大切です。
思い出のいっぱい詰まった大切な家だと思いますが、子どもも孫も使う予定がない場合は、売却や賃貸経営を速やかに考えましょう。
相続人など関係者が複数いる場合は、話し合いに時間がかかることも考えられますので、なおさら早く動くことが大切です。
まとめ
空き家を放置するのは、百害あって一利なしと言っても過言ではありません。
周辺環境へ悪影響を与えているかもしれませんし、ご自身の経済的な損失が発生しているかもしれません。
思い出の詰まった大切な家ですから手放したくないと考えるのは当然ですが、誰も住まない住宅をそのまま放置しておくのがいいのでしょうか。
ご家族や親せきの方と十分に話し合って、ぜひ有効活用しましょう。